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捨てる紙から生まれたデザイン文房具!「りんね」登場|山協印刷株式会社

りんね 山協印刷

コロナ禍の発想転換。
生まれる…新しい文房具

コロナ禍でさまざまな変化を求められる時代。
そんな中、発想を転換して新しいモノづくりをする人たちもいます。

ヨクナルの運営元、
ライブウェル株式会社の名刺や折り込み広告の印刷などでいつもお世話になっている、

神奈川県平塚市に本社をかまえる印刷会社、

山協印刷株式会社さんでは、
印刷をする際に出る、「ヤレ紙」という、
本当なら、産業廃棄物になってしまう紙を製品として加工するプロジェクトを、3月からスタート。

「りんね」というシリーズで
メモ帳や週間スケジュール、一筆箋はもちろん、
日本の伝統的な製本技術「和綴じ(わとじ)」で作る和綴じノートキットなどを販売しています。

今回は、そんな「りんね」を手がけた3人に、「りんね」について語っていただきました。

動画で見る、「りんね」制作ストーリー

▶︎クリックで再生されます。(注:音が出ます)

クリエイティブディレクター
堤さんに聞く、「りんね」

山協印刷

——それでは、山協印刷株式会社、クリエイティブディレクターの堤さんにインタビューしていきたいと思います。今日は、お忙しいところありがとうございます!

堤さん:よろしくお願いします。

——さっそくですが、この「りんね」を作ろうと思ったきっかけを教えていただけますか?

堤さん:まず、あの…コロナ禍で。折込チラシなどの印刷の仕事がだんだん減ってくるわけですよ。そうすると、「あぁもうこのまま仕事がなくなっちゃうんじゃないかな」と思った時にですね。何か会社でできること。自分たちで打ち出すことはできないか、考え始めたのが3月、4月ごろですね。

——はい。

堤さん:そんな時に、工場の方で、白い紙が大量にヤレゴミに入っているのを見つけて…

——ヤレゴミというのは、印刷物を刷り始める前の、インクなどの調整をするときに出るロス紙や、印刷終わりのロール紙の中途半端な余った部分などのことですね。

堤さん:そうです。これって何だろうなぁ、もったいなくないかな。これを使って商品ができないのかなぁ、と考えたのが一番最初です。

——その「ヤレゴミ」は今までどうしていたんでしょうか?

堤さん:基本的には、業者に引き取ってもらって捨てる。本当に、「捨てるだけの紙」ですね。

——リユース、じゃなくて…

堤さん:リデュースですね。二次利用して、「産業廃棄物になる物の量をとにかく減らそう」ということです。

——なるほどですね。この「りんね」というネーミングにはどんなストーリーがあるんでしょうか?

堤さん:捨てるはずの紙を二次利用するわけですから、生まれ変わるという意味の「輪廻転生(りんねてんしょう)」の「輪廻」と「Recycle(リサイクル)」との造語にしようと思って。
でこれ、一番最初、ローマ字だったんですよ。
「Recycle」の「Re」を入れたかったので。「Renne」って。でも本当は、「りんね」ってローマ字で書くと「R i n n e」。「R」「e」じゃなくて、「R」「i」って書くじゃないですか?
「Renne」だと「れんね」って読まれてしまって、人に伝わるスピードが落ちてしまう。なので止めて。ただ漢字で書くと「輪廻」ってかたいので、ひらがなで「りんね」という風にして、出していくことにしました。

——デザインに落とし込むときのテーマって何かモチーフがあったんでしょうか?

堤さん:これは、湘南の海をイメージしてるんです。

——山協印刷さんの本社が平塚ですもんね。

堤さん:そうです。細かいところをいうと、このクルクル巻いている部分。
海の波のイメージもそうなんですけど、輪転印刷機のクルクル回っている紙をイメージしてます。

——湘南の印刷屋さんぽさも、デザインになっているんですね。

りんね製品集合
このクルクルは、輪転機なんですね。

——ヤレ紙を使って、実際にどういう商品が作れるのか。商品展開については、どういう選定だったんですか?

堤さん:まず、ノートを作りたかったんですが、うちに製本技術、というか「製本する機械」がないんです。そうなると、どうやって綴じるんだ?という課題が出てきました。
最初、「二穴にして紐で閉じたらどうだ」という事で試作したんですが、二穴だとどうしても端の方の強度が悪い…。
強度をあげるために、ランダムに穴を増やすと今度は、
「規格もの」つまり世の中に市販されているものが一緒に同封できない…はさみ込めないということが考えられました。
で、6穴だね。…と。
6穴にして、「和綴じ」という糸で綴じる日本の伝統的な製本技術で製本したところ、きっちりと収まったんです。
ただこれ…和綴じを作った状態の製品にすると、1つ作るのに時間的なコストがかかりすぎるんですね…。
であれば、日本伝統の製本技術である「和綴じ」を、お客様が体験していただけるキットにした方がいいんじゃないかということで、まずこの「和綴じノート キット」ができました。

りんね和綴じキット
和綴じノート キット

——和綴じって、知りませんでした。キットは楽しいですね。

堤さん:そうですね。
で、まず一つできたので、今度はバリエーションを増やしたいので、やはり、定番の「メモ帳」。これはデザイナーの冨田の発案です。ヤレ紙をまとめて、1こづつ手作業で糊付けしました。
手作業なんですが、できるね。となったら他のToDoメモとかもできる。一筆箋やWeekly予定帳もできる。これでバリエーションを増やせば、商品点数としてはネットショップにオープンしても大丈夫なラインナップになるよね。
これをきっかけにもっと増やしていこう。
メモ帳に関わらず、いろんなものも作っていこう!という。

りんねメモ帳
さらっと書いて使えるメモ帳

りんねToDo
いろいろ重なっちゃう時、TO DOメモはとても便利です

——では今後もまだまだ商品のバリエーションが増えていく可能性があるという事ですね。楽しみです。
最後に、この「りんね」をどういう方に手にとってもらいたいとお考えですか?

堤さん:エコとか、環境に興味を持っていらっしゃる人に共感を持ってもらい、使ってもらうというのが、一番の、共通点かなと思います。
あと、「和綴じ」という部分では、「知育玩具」として、和綴じを体験してもらいたいなと。
今和綴じってなかなかないので、それを一つの学習教材として使ってもらうというのも、ひとつあるかなと。
あとは、高齢者施設ですね。和綴じって意外と複雑で。頭を使うんですね。どこに紐を通して…と。そういう部分もあります。
和綴じのやり方も、動画を作って公開していますので、ぜひ楽しんでいただければと。

できたら、表紙に絵を書いたりして、
「自分のもの」として使っていただきたいですね。

山協印刷りんね
クリエイティブディレクター 堤さん。

デザイナー
冨田さんに聞く、「りんね」

山協印刷りんね

——次にデザイナーの冨田さんに、デザインについて伺います。

冨田さん:いろいろ考えたんですけど、リサイクルって、すごく大きい問題じゃないですか?地球規模というか…。
大きすぎるので、なるべくやわらかく、身近に感じて欲しいなぁと思いました。

——なるほど。

冨田さん:デザインを作っていく中で、パソコンで作った「絵」という、カチッとしたものよりは、まぁロゴもそうですけど、やわらかい、パッと見て親しみやすいものにしたいなという思いが一番ありました。
なので、水彩絵の具を持ってきて、いろんな色でいくつも書いてみたんですが、やっぱり平塚で生まれたもの(※編集部注:山協印刷さんは本社が平塚です)ということで、青かな。湘南色。海の絵にして描くのが一番しっくりきたというところで、このデザインに落ち着きました。

——普段から絵はよく描くんですか?

冨田さん:そうですね。デザインの幅を広げるのに、やっぱり手書きがあるといいですし。手書きの持つあたたかみみたいなものがデザインに落とし込めますね。

りんね原画
湘南の海、輪転機のクルクル

——第一弾のシリーズは今お話いただいたコンセプトでデザインを作られたわけですが、今後も商品が増えていく中で、このデザイントーンを続けていくのか…。はたまた、また別の方法論で展開するのか、その辺はどうお考えですか?

冨田さん:手書きのやわらかさはりんねのロゴにも合っているので、今後もベースにはしていきたいと思うんですが、やっぱりこの先。
この商品を売っていくだけじゃなくて、いろんな会社さん、企業さん、個人のお店やショップとかとコラボしていく方が、展開として楽しいと思っていて。
そっちを考えると、いろんな。ま、硬いデザインがあってもいいですし。いろんなデザイン。なんでもありかな?って思ってます。

——では実際に、お客さんの社名を入れたりということもできるんですね?

冨田さん:そうですね。完全オリジナルでできますので。はい。オリジナルのデザイン作成から対応させていただきます。

山協印刷りんね
デザイナーの冨田さん

製造部
池田課長に聞く、「りんね」

山協印刷りんね

——最後に、実際に製品化するにあたって大変だった事など、製造部の池田課長に伺います。

池田さん:やはり、その…初めての試みなので、「りんね」が完成されるまで、各セクションを回るんですが、そこで考え方や捉え方のちょっとしたズレみたいなものがあったりして。
一つの製品を作るまで、すりあわせをしながらようやく完成に至っているというところが、非常に苦労した点ですね。

——新しいことをするためには、関係者の意識を同じ方向に向ける必要がありますよね…。技術的な面ではいかがですか?

池田さん:全て社内で作っていますので、糊付けですとか、そういったところも。初めてやることですので、やはり精度。製品としてのクオリティを出すのが大変でした。
製品にするにあたっては、デザイナーからの要望などに対して、技術的な面からやりとりをしたり、
また、もともとがヤレ紙ですので、毎回毎回出てくるヤレが違うんですね。ですからその辺りもすり合わせをしながら最適なものを選べるようにしました。

りんね
社内で企画・デザイン・制作。ワンストップで対応しています

——ヤレ紙の数量の確保っていうのもありますよね。

池田さん:そうですね。オンデマンド印刷のヤレってそんなに出ないんですが、オフセット輪転機の方だとヤレが多く出る仕様なんですね。ですからそのヤレをうまく使って材料の確保をしています。

やれ紙はこうやって保管
日々の印刷で出る、ヤレ紙

——最後に、今後の目標などありましたら。

池田さん:まずは、今のラインナップをしっかり品質を上げていくというところです。
今後については、
プロジェクトを組んでいますので、さまざまな意見を聞きながら、新しいものを探っていきたいと思っています。

——たくさんの人の手にとってもらえるといいですね。

池田さん:そうですね。

山協印刷りんね
製造部 池田課長

「りんね」詳細、ご購入はこちらから

りんね 湘南

捨てるしかなかった紙をつかって誕生した文具シリーズ「りんね」いかがでしたでしょうか。

コロナ禍で状況が変化した結果、今までと違う視点でまわりを見渡すことで、新しいものが生まれていく。
新しいものづくりのエネルギーを感じるインタビューでした。

「りんね」の購入・詳細は、それぞれ以下のURLからアクセスしてチェックしてみてください。(別ページです)

詳細は▼
湘南ナビ! りんね特集ページ

購入は▼
湘南ナビ! BASE Shop

エコな文具で、毎日が少しヨクナルといいですね。
山協印刷、堤さん、冨田さん、池田さん。お忙しい中取材へご協力いただきありがとうございました。

山協印刷株式会社

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