大人の社会科見学❶
蔵前水の館に東京の下水道を見に行こう!
蔵前水の館がある、東京都水道局 北部下水道事務所のすぐ裏を流れる隅田川。正面が上流です。
こんにちわ!ヨクナル編集部です。
すっかり秋になりましたね。
秋といえば、爽やかな気候に誘われてお出かけしたくなるもの?!
そこで今回はいつもの事務所を飛び出しての、お出かけ企画!
大人の社会科見学と題しまして、
東京台東区蔵前にあります、蔵前水の館にお邪魔してきました。
ヨクナルの運営会社であるライブウェル株式会社が提供する、
スマイキュア排水管高圧洗浄では、一戸建ての排水管のお掃除をしていますが、排水管のさらに先!
公共の下水管へ流れて行った生活排水はどこにいくのでしょうか?
下水道を見学できる施設はないかと、インターネットで調べたら発見しました!
それが今回お邪魔する蔵前水の館!
こちらの施設はなんと、下水が地下で流れている様子を見ることのできる、
東京23区では唯一の場所。
現役で使われている下水道管の中に入って見ることができるんですよ!!
ということは、蔵前周辺の建物から排水された、生活排水の通り道!
見てはいけないものを見るようなワクワク感…あります。
では、行ってみましょー!
東京下町、地下世界の入り口
蔵前水の館に行くためにやったこと…
まずは見学日を予約します
見学をするには、予約が必須となっています。
予約は電話か、蔵前水の館のホームページの予約ページ(蔵前水の館のホームページはこちら)からすることができます。
電話予約は1週間前、インターネット予約は10日前までに…となっていますが…
予約カレンダーを見ると、結構先まで予約で埋まっていることも。
ヨクナル編集部は、1ヶ月半くらい前に予約をしました。
なかなかの人気スポットです…。
※蔵前水の館は、2020年12月24日現在、新型コロナウイルス感染症感染拡大防止のため、見学の受付と見学を中止していらっしゃいます。予約の受付再開については、下水道局ホームページまたは、下水道局Twitter等でお知らせしますとのことです。はやくまた見学ができるようになることを願うばかりです。
晴れることを祈ります
実は、これがとても重要。
この施設。雨が降ると入館ができなくなります。
合流式下水道という方式のため、雨が降ると雨水が下水道管に流れ込んでくるんですね。
これによって水位が上昇して、危険だからとのことでした。
予約をしたらあとは、ひたすら雨が降らないことを祈るのみです…。
(ヨクナル編集部はというと、統計的に晴れることが多い10月10日に予約をしました。見事に晴れました!)
蔵前水の館って、どこにあるの?
予約日になったら、出かけましょう。
都営浅草線の蔵前駅から徒歩5分、都営大江戸線の蔵前駅から徒歩8分、JR総武線の浅草橋駅からだと徒歩10分のあたり。
隅田川を背にした東京都水道局 北部下水道事務所の敷地内にある、蔵のような建物こそ、
今回の目的地、蔵前水の館です。
突如現れる、蔵!
蔵前橋通りに向かって、看板も出ています。
ヨクナル編集部は事務所がある祖師ヶ谷大蔵からの電車の乗り継ぎの関係で、JR総武線 浅草橋駅から歩くことにしました。
浅草橋は戦前から玩具や文房具の問屋街だった土地柄、
現在も様々な専門店があり、目的地までの道中もブラブラ散歩を楽しむことができました。
また別の機会にゆっくり散策したい場所です。
まずは、事務所で受付を!
敷地内から。蔵前水の館の対面が、北部下水道事務所の建物です。
蔵のような建物を横目で見ながら、北部下水道事務所の建物の1Fに入りました。
受付で「蔵前水の館」の予約をしていることを伝え、エントランスの掲示物を見ながら予約時間まで待ちます。
下水道局マスコットキャラクター「アースくん」
下水道菅の長さは16,000km!?これについてはまたのちほど。
東京の下水道を2,832人の職員の方々が支えています。
下水道は、大雨から街を守ってくれる役割もあります。
東京都 下水道局北部下水道事務所のエントランスにある展示物。
モルタル等の下水管への流入事故が増えているとのこと。モルタルを下水道に流しちゃダメ、ぜったい。
ご担当いただく水環境案内人の方と、蔵の前でお会いしました!
ブラブラしていると、予約時間に館内の説明をしてくださる、水環境案内人の方が声をかけてくださいました。
こんにちわ、今日はよろしくお願いします。
こんにちわ!こちらこそ、よろしくお願いします!現役の下水道管の中に入れると聞いてワクワクして来ました!
そうですか。地下30mまで降りて見学していただくことになります。
わかりました。楽しみです。
ここの敷地はもともと、国技館があった場所だと聞きましたが。
そうです。1950年から1984年までこの場所に蔵前国技館がありました。
建物が老朽化したために、国技館は今は両国にうつりましたね。
なんとなく建物が「蔵」っぽいのは、地名の「蔵前」のイメージですね?
蔵のような…。
江戸時代に幕府が集めた年貢米などを収めておく「浅草御蔵(あさくさおくら)」があって、米問屋なんかが並んでました。「御蔵前(おくらまえ)」と呼ばれていたのが、昭和9年から「蔵前」となりました。
そういう地名の由来ですから、蔵のような外観で建ててあります。
原稿の企画がお蔵入りになることはありますが、自分で蔵に入るのは初めてです…
…。
ここから1時間少しのご案内になりますので。お手洗いは大丈夫ですか?
では、行きましょうか。
地下30m、下水道の世界へ
蔵の中へ
ボランティアスタッフさんのあとについて、施設内に入って行きます。
地下世界への入り口。普段見られないものを見ると思うと、ワクワクしてきます。
地下世界への入り口が開きました…(ドキドキ)
ここから、地下30mの下水道菅まで階段で降りて行きます。途中休憩もしますが、ゆっくり行きましょう。
階段で、地下30mまで降ります。30mというとマンションの10階と同じくらいの高さになります。
はい。
あ、すでになんとなく下水のニオイがします。
ところどころに、お相撲さんの手形が飾ってありますね。
さきほどもお話ししました通り、この場所に国技館があった関係で、
こうして飾ってありますよ。
そうなんですね。千代の富士は僕のヒーローでした。
千代の富士の他にも、たくさんのお相撲さんの手形が。
各階段の踊り場ごとにお相撲さんの手形が飾ってありました。
お相撲の話なんかをしながら、どんどん降りて行きます。
まずは、下水道資料室へ。
半分ほど降りたところに、下水道に関する様々な資料が展示してある部屋がありました。
一度こちらに立ち寄って、水環境案内人の方から施設のご紹介をしていただきました。
下を覗くことができる展示を覗き込みながら、地下までどうやって水を運んでいるのか、なぜ地下30mという場所に下水道管を設置しているのかなどお話いただきました。
水が勢いよく流れ落ちているのが、おわかりになりますか?
残念ながらうまく撮れませんでした…。実際に流れ込んで来た汚水が勢いよく地下へ落ちていきます。ぜひ実際に見学してご覧いただければと思います。
はい、見えます。ずいぶん下の方へ流れ落ちて行くんですね。
これは実際の汚水です。ここから、地下30mにある下水道管まで落としています。
ここで一気に落とすんですね。
なんでそんなに地下深くに下水道管を作るんでしょうか?ニオイとかが上がってこないようにですか?
東京の地下は、地下鉄がたくさん走っているでしょう?そういったものを避けるためにはどうしても地下深くに潜る必要があったんですね。
あ、そうか。いろんな地下鉄が走ってますね。
しかし、30m下に落ちるとなると、ちょっとした滝ですねこれは…。
下がとんでもないことになってそうで怖いです…。
垂直落下したとしたら、衝撃力は凄まじいことなりますね。
のちほど模型でご説明しますが、そうならないような仕組みがありますので安心してください。
そうですよね…。「汚水の滝」はちょっと嫌です…。
こちらの資料はまた後で、ご案内します。
さらに下へ行きましょう。
さらに地下へ
資料展示の部屋を出て、さらに地下へ降りて行きます。
少しモワッとした空気を感じました。
階段を下りきったところにある部屋に入ると、
下水道管に続く階段。
その手前には太さの違う管が2本設置されています。
写真奥が雨水のドロップシャフト。手前が汚水のドロップシャフトです。
さきほど、上の階で水が落ちて行くのを覗いて見ていただきましたね。
それが、この管です。ドロップシャフトと言います。
この細い方には「汚水」、
太い方は、「雨水」が流れ落ちるようになっています。
汚水用と雨水用とでずいぶん太さが違うんですね。
汚水と雨水を1本の下水道管で流す、「合流式下水道」という方式をとっているため、
晴れている日や少しの雨なら、汚水だけが流れてきますが、
大量の雨が降ると通常の数十倍の水が、下水道管に流れてきます。
ですのでそれに対処するため、それぞれ大きさの違うドロップシャフトを設置しています。
大雨の日なんかは、この大きい方のドロップシャフト内を雨水が流れます。水の音がとにかくすごいですよ。
数十倍ですか…。
自然の力はとてつもないということです。
らせん案内路式ドロップシャフトの模型。水を螺旋状に誘導することで、下に落ちた時の衝撃を緩和する技術です。
この模型が、ドロップシャフトの仕組みです。
さっき言ってた「汚水の滝」…
30mもそのまま垂直に水が落ちたら、下が大変なことになる…ていう話ですね。
模型を見てわかるように、水が螺旋状に落ちて行くような仕組みになっています。
渦流を生み出すことで発生した遠心力で、水が管を沿って落ちて行くので、落下時の衝撃をおさえられるんです。
なるほど。中がスクリューみたいになってるんですね。
これだったら「汚水の滝」にならずにすみます。
ちなみに1日にどれくらいの汚水を処理できるんですか?
23区の下水処理能力は1日に約639万㎥、下水処理量だと1日約424万㎥です。
4,240,000㎥…。って想像つきませんね…。
すみません。それって、ベタですけど東京ドームでいうと何杯分ですかね?
(笑)東京ドームでいうと、
天井までいっぱいにして、約4杯分です。
1日に僕たちの出す生活排水が、東京ドーム4杯分も処理されているんですね…。
…なんか、すみません。いつもありがとうございます。
人間の営みもなかなかの規模です。
今いるところが、蔵前ポンプ所です。
さて、
この地図は、東京23区で今いるところが、「蔵前ポンプ所」です。
ご存知のように地下には、下水道管が通っています。
各家庭からつながる細い下水道管「枝線」で集められた下水は、「幹線」と呼ばれる太い下水道管に集まって、最終的に水再生センターにたどり着きます。
(スマイキュアで高圧洗浄している、家庭の排水管の「枝管」と「本管」に似ていますね。)
まるで葉っぱの葉脈のようでしょう?
幹線、枝線を合わせると約16,000km。
東京とオーストラリアのシドニーを往復できるくらいの距離になります。
オーストラリアのシドニーまで行って帰ってこれちゃうんですね。
この印のある「浅草橋幹線」というのが、これから見ていただく下水道管の名前です。
では、行きましょうか。
いよいよですね。
ついに、下水道管へ
鉄の階段をタンタンと降りて行くと、目的の場所にたどり着きました。
地上から深さ30mの地下に、流れる汚水…。
うん…汚水ですこれは…。
いよいよ!浅草橋幹線へ降りて行きます。
内径6,250mm 浅草橋幹線です。
どうですか?
滑らないように、落ちないように、下に物を落としたりしないように気をつけてください。
お〜でかい!高い!広い!
足がすくみます。そしてなんだか生暖かい。
当たり前ですけど…やっぱり、下水のニオイですね(笑)
写真上から流れてきた汚水は、写真下の方へ流れポンプ所で吸い上げ、写真上の方に送る仕組みです
(笑)
人間の営みです。
あちらから流れてきた汚水を、ポンプ室で吸い上げて、
「浅草幹線」まで約300mポンプ圧送し、三河島水再生センターで処理します。
雨水は、隅田川へ放流しています。
これ以上自然の傾斜で水を流そうとしても、どんどん地下に行ってしまいますから、
ポンプで吸い上げて送るんです。
ポンプですか。
ここ蔵前ポンプ所の汚水ポンプは1分間に80㎥、
雨水のポンプは1分間に4,560㎥の水を汲み出すパワーがあります。
…パッと聞くだけで、なんだか凄そうですね…。
わかりやすくいうと、雨水ポンプは、
小学校の25mプールを約4秒で汲み出すほどのパワーを持っています。
めちゃめちゃ吸い込みがいいじゃないですか?!
大雨が降ったりすると、この広い下水道管がいっぱいになる程、
一気に水が流れ込んできます。
それらを汲み出して処理をしないと溢れて大変なことになりますから、
それだけのパワーが必要です。
この下水道管はどのくらいの大きさなんですか?
下水道管の大きさ比較(蔵前水の館掲示資料より引用作図)
内径6,250mmですから、6m25cm。
見学に来る子供達にわかりやすく説明するときには、キリンがだいたい4.8mくらいと説明していますよ。
何気なく使っている水は、こうして旅をしているんですね。
では、地上に戻りましょう。
はい、貴重な見学ができました。ありがとうございます。
知らなかった下水道のあれこれ
下水道に関する最新技術がたくさん
下水道管お掃除道具の歴史。
高塩化ビニル製の帯状板を古くなった下水道管内に巻いて貼り付けていく、下水道管の補修技術。これなら道路を大規模に掘り起こさなくても大丈夫!すごい技術です。
地上に戻る道すがら、さきほどの資料が置いてある部屋に立ち寄り、下水道事業の歴史や取り組み、最新技術などについてお話をいただきました。
合流式下水道から放流される汚水で、海や川を汚さないようにする様々な工夫、
老朽化した下水道管を掘り出さずに補修する特許技術、
下水道施設の耐震化など、パネルや模型を見ながら解説をしていただきました。
マンホールの雑学も
マンホールの展示コーナー。
また、マンホールに関する展示も。マンホールの歴史や、雑学などマンホーラーにはたまらないスペースです。
マンホールの真ん中、黄色や緑のキャップがマンホールの固有番号に。下の青いキャップは、災害時のマンホール仮設トイレが設置できる証です。
東京都のマンホールには、すべて固有の番号がついているんだとか。
ということは、「013H0H60のマンホール」で待ち合わせね〜。なんてマニアックな遊び方もできるということですね(笑)。
災害時にマンホールに直接設置可能なマンホール用仮設トイレ。
また、「災害時に仮設トイレが設置できるマンホール」というのがあるそうで、
設置できるマンホールには専用のキャップが取り付けられているんだとか。
知りませんでした。
病院や避難所などに優先的に整備されているようですので、何かの際にチェックしてみるといいかもしれません。
下水道のためにできること
地面の下で色々な最新技術を使って、メンテナンスなどが日々行われているんですね。
そうです。目立つ仕事ではないですが、
私たちの暮らしのために大切なインフラですから、
たまに下水道のことを思い出してもらえたらいいなと思います。
そうですね。
話は変わりますが、このポスター。
ライブウェルでも排水管高圧洗浄をするお客様に、
「油とかを排水管に流さないように気をつけてください。」とご案内しています。
下水に油を流さないようにしましょう。
下水道に油を流すと冷えて固まって詰まったり、
川や海を汚す原因にもなりますから、ぜひ「洗う前に油汚れを拭き取る」一手間をお願いします。
地上へ
見学を終え、階段を登って地上に戻ってきました。
1時間半近く、丁寧にご説明いただきました。
今日はありがとうございました。
これを機会に、たまに下水道のことを思い出してください。
今日はお疲れ様でした。
お気をつけて。
これは、見学していただいた方にお渡ししているマンホールカード です。
あ!やった、集めてます!ありがとうございます!
蔵前水の館に見学者した人だけがもらえるマンホールカード!海、ゆりかもめ、イチョウ、ソメイヨシノがモチーフです
私たちの生活を足元から支える下水道事業
下水道は普段は見えないものです。
当たり前にあるように思いますが、もし下水道がなかったら、快適に生活をすることはできません。
蔵前水の館は、実際の下水道管内の見学と水環境案内人の方のご案内を通して、下水道に関する理解を深めることのできる、そんな施設でした。
ぜひ、地面の下で私たちの生活を支えてくれているインフラに触れてみるのはいかがでしょうか。
ヨクナル大人の社会科見学第一弾、蔵前水の館編でした!
今回取材・記事作成にご協力いただきました、みなさま。
誠にありがとうございました。